小説キャンディ・キャンディFINALSTORY 感想
『小説キャンディ・キャンディ FINAL STORY』
70年代に大ヒットしたマンガ『キャンディ・キャンディ』の原作を担当した水木杏子さんが書いた、マンガの後日譚を含む小説です。
(本小説の名義は名木田恵子さんとなっています)
原作は私も大好きで、コミックも持っています。久しぶりに読みたくなりました。でも、例の裁判の件で、コミックは絶版なんだそうで…。
以下、ネタバレを含んだ感想です。
小説版の流れはコミックス第4巻の内容まではほぼコミックス版通りです。コミックス終了から数年後くらいのキャンディが、キャンディ自身や登場人物たちの現在の状況を語りつつ、過去を振り返る…という手法で書かれています。
が、コミックス第5巻以降の展開は、小説版では書簡形式で書かれています。
これがね~、残念でした!
私、コミックス第5巻からの展開の方がスキなんですよね。小説版は5巻以降の展開はかなり大急ぎで進行します。5巻以降の話ってまとめられちゃうくらい薄いお話だったですかね…。まあ、新しい登場人物は5巻以降は少ないので、登場人物たちの個性を掘り下げるために4巻までの内容を濃く取り上げたのかもしれませんが…。
コミックス5巻から、キャンディを取り巻く環境にリアリティが出てくるんですよ。
コミックスを読んでいたのは私が小学生の頃ですが、第4巻までは、どこか遠い場所、レイクウッドとか聖ポール学院といった、夢のような世界にいる少女のお話…という認識だったんですよね。
でも、5巻から、キャンディは自分の人生を自分の足で切り開いてゆくようになり、看護師になるための過程や第1次世界大戦との関わりなど、現実にいそうなキャラクターとして立ち上がってくるんです。
また、スキな男性と結ばれないエンド、というのも、小学生ながらに切なくて、将来キャンディはアルバートさんと結婚してほしい…と願ったものでした。
小説版後半は書簡形式で話が進むため、話の過程でキャンディや登場人物たちの心がどう揺れたかというより結果に重きが置かれるので、「ああ、あの後そうなったんだ」と納得するしかないような感じでした。ジョルジュとキャンディの関係の掘り下げなどは良かったですね。
コミックスには描かれない登場人物たちのその後はこんな感じです。
・アニーとアーチーは結婚する。ただし、アーチーはかなりキャンディを引きずっており、アニーは根気よく待ったな…という感じ。
・パティは教職を目指す。
・フラニーは無事戦場から戻り、表彰される。
・ニールは実業家としてラガン家の跡を継いで、結婚騒ぎの後、キャンディと一定の距離を置いている。キャンディもラガン家の人たちを遠い目で見守っている感じ。
・ポニーの家はポニー先生の体の具合が悪くなったりしつつも、今もあのまま。アルバートさんの支援があったりもする。
・スザナはテリィと暮らすも結婚はせず、若くして亡くなる。
・キャンディはロンドンで誰かと暮らしている。ポニーの家が気になるけど、「誰か」が寂しがるから離れられない。
さて、今回小説版を読んで、印象が変わった人物がいました。
テリィです。
たぶん、連載当時テリィの人気は断トツだったと思うんですけど、申し訳ない、まったく魅力を感じませんでした…。
これは小説のせいではなく、コミックスを私が読み返したとしても同じだったと思います。大人になった今読むと、価値観の変化などもあり、テリィちょっとひどくない??という印象…。
一番受け入れられなかったのは、テリィがキャンディをたたくシーン。
メイフェスティバルでキャンディにキスするシーン、キャンディはびっくりしてテリィの頬を叩くんですが、テリィはキャンディを叩き返すんですよね。他にも、別のシーンで1回、テリィはキャンディを叩いています。
ニールがキャンディを叩くのはいいんですよ(よくないけど)。ニールはそういう、キャンディの意志を無視してキャンディに嫌なことする役ですから。
でも、テリィがキャンディを叩くのは、果たしてストーリー展開的に必要なシーンだったかどうか…。テリィのキャラクターを色づけるために必要なシーンだったかどうか…。
テリィがキャンディにキスしたのは、キャンディを愛しいと思ったからじゃなくて、アンソニーへの対抗心がきっかけだと思うんですよ。キャンディを叩いたのは、叩くことでキャンディに何かしら働きかけようとしたのではなく、キャンディに叩かれたから、やられたからやり返したという状況です。
テリィが叩くシーン、必要だった?この暴力シーンはテリィの何を表現したかったんだろうか。キャンディをアンソニーから奪いたいというテリィの苛立ちを表現したいなら、暴力ではなくて、別の表現方法はなかったんだろうか。
今読むと、テリィはとても幼いんだなとわかります。でも、体がキャンディより大きいし、青年っぽい外見なので、テリィのキャンディへの暴力は、読んでてキッツいんですよ…。
自分が読んでいたのは小学生のときで、男女で叩きあいのケンカなどもある時期だったので、今ほどの違和感を感じてなかったし、女性への暴力が今より頻繁にあった時代ではあるので、現在の価値観で言及するのはよくないのかもしれませんが、この点だけは「ああ…」って感じで、『キャンディ・キャンディ』は名作です!と言うには躊躇するというか…。
キャンディはどうしてテリィがスキなんでしょうね…。
アルバートさんの方が大人だし優しいし初恋の人だし、いいと思うんだけどな…。
というわけで、アルバートさんを推しつつ、感想を終わります。