まりかど雑多忘我録

まりかど雑多忘我録

見たり読んだりしたことの感想を、自分の脳を整理するために書いてます。

青のフラッグ感想 その2 太一の価値観

青のフラッグ感想2回目です。

1回目はこちら→  

青のフラッグ感想 その1 二葉の選択 - まりかど雑多忘我録

 

青のフラッグ 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

青のフラッグ 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

  • 作者:KAITO
  • 発売日: 2017/04/04
  • メディア: Kindle
 

 

 (一度書いたのですが、保存の仕方が悪かったらしく…消えてしまいました(´;ω;`) 再度テンションをあげつつ、書きたいと思います)

 

以下、ネタバレを含みます。

 

---------------------

 

太一の価値観の話をしようとしたら、どうしたってラストの大逆転になりますが…。
でも、ストレートであるはずの太一がどうして?と思うことは、それこそ、太一をこういう人間のはずだ、と「普通」の価値観から断定してしまっていることになるんですよね。

最終回前と後とで、太一の周囲は相当に変わってしまっているのですが、それは、太一が二葉ではなくトーマを選んだ、というだけでなく、太一の価値観が真逆になった、ということ。

 

---------------------

 

高校生の太一は、自分が嫌いで、「普通でいい、無難にこなしていればいい」というあきらめに似た感情を持っています。それが、7年後の最終回時点では、トーマと結婚(たぶんパートナーシップ制度)し、人前でトーマと手をつなぎます。
全然普通じゃない。無難じゃない。
でも、臆することなく、笑顔で手をトーマに差し出すんですよ。

 

太一のこの価値観の変化の過程は、物語では語られません。むしろ、物語において変化や成長が描かれているのは二葉で、太一の選択は、最終回前、トーマとの会話によって描かれるのみです。ここからの、怒涛の太一の感情の開放がねー…すごいなーと。

 

そもそも、太一はトーマをどう思っていたんでしょうね。
感情がまとまらないまま、思いつくままに書いていきたいと思います。

 

---------------------

 

太一は、小学生の頃は友達から「負けず嫌い」と言われるように、こっちの道がダメなら自分で道を作る!という、我が道を行く子なんですよね。

 

中学生の頃の描写は少ないのではっきりとはわからないのですが、高校では、クラスが違うのに「仲がいい」とヨーキーたちから思われるくらいだから、中学生のときはなおさら、いつも一緒にいるような状態だったんじゃないでしょうか。


ヒーロー属性のトーマの隣にいる、華がない太一。
トーマの周囲の友達にとって、自分たちがもっとトーマと近づきたいのに、トーマの横にいる太一は邪魔な存在だったんじゃないかなー。太一とトーマは変わらないのに、周りはどんどん変わってしまって、周りはトーマだけを誘いにくる。
そういう周りの感情を、太一は察知してたと思うんですよね。

 

 自分が一歩さがれば、分をわきまえれば自分が傷つかずに済む。それが、トーマの隣にいたために負ってしまった感情なのだとしたら、太一もトーマもキツイなあ…。

 

--------------------- 

 

太一は男女の性差を強く意識します。
小学生のとき、トーマと手をつないだらトーマから「女子みたいだから」と手を離された。このときがたぶん、太一の中で最初に現れた男女の性差だと思うんですよ。女の子に対する態度も同性である男の子への態度とかなり違って、バリバリに意識してるし。

 

ケンスケも同じように男女の性差を意識するタイプですが、ケンスケのそれが「女子は弱い、男子が守らないと」って感じなのに対して、太一のそれは、こじらせてる感じがするんですよねー。

 

もし本当に、太一の意識が男女でくっきり分かれているなら、トーマから告白されたときにあんなに悩まないと思うんですよ。男から告白はありえない、と。
まあ、ありえないと太一は思ったかもしれない。


でも、それでも、友達としてのトーマと別れることはできなかった。トーマと一緒にいると楽しかったから。それは、トーマという友達と一緒にいる自分がスキだということを、太一が認めたということだと思うんです。

 

自分のことが嫌いで、自分にあきらめていた太一が、自分を肯定したんです。

 

恋人は女性、友達は男性。それが太一にとっての普通だった。
それが「普通では、男から告白されたら断るのかもしれない。でもオレはオレのスキな道を選ぶ」と自分を肯定したときから、一気に崩壊してるんです。
物語の冒頭から言われている「恋人と親友、どちらを選ぶ」という問いに対して、「恋人と親友が同じ人なら、選ぶもなにもない」という答えにまで達しているんです。
すごい価値観の崩壊ですよ。 

 

---------------------

 

太一は結構受け身なんですよね。
二葉と付き合ったのも、言ってきたのは二葉からだったし。もちろん、太一は本気で、中学生のときの彼女や二葉をスキだったと思うんです。だから、タイミングの話はラストでかなり印象的に使われてましたけど、タイミングがあえば、二葉と結婚する未来もあったと思うんです。

 

でも、二葉に対して、太一は受け身で、トーマとの関係の違いは、そこにあるのかな、と…。ネコを助けたときと同じように、太一は、離れてゆくトーマを追いかけて手を差し出したんです。

 

告白されてトーマに対しても周囲に対しても気まずいなら、あのまま、学校に来なくなったトーマを放っておけば良かったんです。そのうちみんな飽きて何も言わなくなるだろうし、実際、告白後の太一は「なんで俺が悪者みたいになってんだ」と状況にイラついてますし…。

 

太一は案外と自分のことばかりなんですよね(笑) トーマに対して割と好き勝手言ってるというか…。いろいろ頭の中で考えてる太一が、トーマのことになると無自覚になる。それを変えたのが、トーマのお守りだと思うんですよ。
「親友パワー」のお守り。

 

トーマがくれたお守り。トーマの太一への気持ちを考えたら、自分の気持ちをお守りに託した可能性だってあります。でも、「親友パワー」は、相手の幸せを願うおまじないみたいな言葉です。
トーマは、自分の気持ちより太一の幸せを願っていた。

 

うん…なんか、恋人と友達の違いって何?…って思えてきた…。

 

---------------------

 

二葉は、恋人が誰かといると不安になります。その二葉が、トーマと太一が一緒にいることを許容できるんだろうか…と思うんですよね。
マミちゃんと太一の場合は、マミちゃんに恋愛感情がないから納得できたけど、トーマには恋愛感情がありますからね…。

 

そう思うと、二葉やトーマの答えが、自分と自分以外の人の幸せを願う「親友パワー」だったとすると、太一の答えは、かなり自分本位だったと思うんです。

 

トーマの幸せが、親友として太一の隣にいることであったとしても、太一自身が言うように「フラれた相手と友達でいつづけるのはツライ」わけです。
太一が二葉やトーマのそういう感情に思いやれなかったとは思えない。
二葉とトーマを悩ませることになるかもしれないけど、自分がしたいことをするようにしたんです。

 

太一のしたいこと、それは突き詰めると「もっと話したい、トーマを知りたい」なんじゃないでしょうか。

---------------------

 

小さい頃からトーマと一緒にいながら、トーマが何を考えているのかわからず、思いもしなかった感情を伝えられて、トーマを知らない人みたいに思えてしまった。
知ったつもりで今まで話をしていたのに、何もわかっていなかった。
それを後悔しないように。

 

太一にとってのトーマは、自分を「すげえ!」って褒めてくれる大事な人なんですよ。トーマはすぐ「タイちゃんすげえ!」って言ってくれる。満面の笑顔で。太一にとって、すごく大事な笑顔だったと思うんです。

 

---------------------

 

自分を認めてからの太一は、あれだけ苦手意識のあったトーマの友達と、高校を卒業してからも連絡を取り合う関係になっていたし、何より、人前でトーマと手をつなぐくらいだから、ほんと、同一人物なの?と思ってしまうくらい…。
なんというか、こう、自分に自信を持つようになってますよね。

 

太一の高校卒業後の進路は何も明示されてないけど、小学生の頃のように、負けず嫌いを発揮して、クリエイティブな方向に進んだんじゃないかと思います。もともと太一はこういう性格で、自分や、自分がスキなものに対する他者の評価への恐れが、優柔不断にさせてたんだろうな。トーマは太一全肯定なので、太一は今すっごく幸せなんだろうなー。

 

---------------------

 

私がトーマ大好きなので、勝手なこじつけとも言えるんですけど、ずっと太一はトーマがスキだったんだと思うんですよね。

 

小学生の頃からずっと、その気持ちは変わってない。でも、トーマへの感情は中学生のときに散々こじらせてるから、スキという感情がコンプレックスに上書きされて、どこか無意識の場所に行ってしまったんじゃないでしょうかね…。

 

応援団の練習のとき、二葉が太一にトーマの進路について話をしたら、ちょっとイラっとしていました。
太一を抜きに、二葉とトーマが二人で大切な話をしたからなんですけど、これ、トーマはオレに先に話してくれなかったというヤキモチなんじゃないですかね…。


太一がスキになる女の子はみんなトーマの周りに現れた、トーマがスキな女の子ですし…。これもヤキモチから転じて…。
中学生のときも、トーマの周りの友達に対するヤキモチがあったのでは…。
「他の友達と一緒にいるお前が苦手だった」って、ヤキモチそのものでは…。
こじつけすぎかな…(笑)

 

---------------------

 

だってね、しばらく疎遠でありながら、再び一緒に過ごすようになったら、トーマのいいところとか、本当はどんなヤツかとか、ひょいひょい出てくるんですよ。
トーマとの関係だって、なじみまくりで強気じゃないか!
苦手とかいいながら、トーマに対して強気じゃないか!

ヨーキーたちへの態度ともまた違ってて、素が出てますよね。
マミちゃんからはうらやましがられるくらいに仲良く見えてるし(この場合はトーマ側の態度がマミちゃんをそう思わせていたのかもしれませんね)。
一番自分にムリなく、自然体でいられるのがトーマだった、そういうことなんだと思います。

 

---------------------

 

「大切な人がたくさんいたらいけないの?」
「少なくとも、男と女に関しては」
「友達でいようとは言ったものの、俺から会うことなんてできなくて」

 

つまり、二葉とは、別れても友達でいることはできなかった。
自分がふった相手だから?二葉が異性だから?
でも、自分から友達でいようと言ったトーマとは、離れずに今に至っている。


トーマが同性だから?同性だったら、自分に恋愛感情がある人とでも友達でいられる?
同性だとしても、それは難しいですよね。
トーマだから離れられなかったんだと思うんです。

 

だから、私はなんとなく、太一と二葉が別れた原因は、トーマが何かしら関係してるような気がします。太一がトーマではなくヨーキーに話しに行ったのは、そのためなんじゃないですかね…。
トーマはそれからもずっと二葉と連絡を取り合っていたようだから、トーマ絡みの何であるかは、トーマは知らないんじゃないかなあ。
でも、二葉は、トーマにも言ったように、トーマのことを悪いと思えない、嫌いにはなれないから、そうなってもトーマとつながっていたのだと思う。

 

トーマが太一に聞いた「最後の確認」っていうのは、太一がトーマと一緒にいること(あるいは結婚)の確認のことなんでしょうね…。

 

---------------------

 

「青のフラッグ」って、自分が何をしたいのかわからない、自分の気持ちを見つけられない太一が、長い時間かけて「トーマと一緒にいつづけたいという我を通す」ルートを選択する話だったんだなって、思うんです。
それが結果的に、太一自身も思いもよらない、人生においてものすごい分岐点になった、という…。

 

まとまりがないですけど、次回その3に続きます。

 

 

matsuri-js.hatenablog.com